トイレにて、亜月はしゃぶっていた。
何を?
それは、便器だった。
敢えて言うが夏御蜜柑の城は公衆便所である。
ちなみにここは城の入り口である女子便所。
「早く掃除しなよ亜月」
「は、はい・・・すみません」
今週は掃除当番だったため、帰宅時間が遅かった。
それを知っていながら夏御蜜柑はわざと憤慨したのだ。
そこで、便所を舐めて掃除させた。
「だいたい掃除とあたし、どっちが大事なのかな?」
夏御蜜柑は必至に便器を舐めまわしている亜月の頭をぐりぐりと踏みつけた。
亜月の瞳に涙が宿る。
「す、すみませんご主人様!」
その刹那に宿る邪悪なる言葉と、夏御蜜柑の下卑た笑み。
「ん〜あたしさあ、うんちしたくなっちゃった」
「え? それではすぐに掃除しますからどうかお待ちを・・・」
「いやだね、1秒も待ちたくない」
「そ、それではどうしたら・・・」
「決まってんじゃん。亜月が便器になればいいんだ」
「ええ!?」
亜月の慟哭など耳に傾ける事無く夏御蜜柑は亜月の顔に己の尻を載せた。
「口開けないとひょっとしたらお尻から硫酸がでてきちゃうかもしれないよ。そしたら亜月の顔は溶けちゃうんだよ〜」
邪悪な笑みを浮かべながらそう言うと、亜月は即座に口をあけた。
すると夏御蜜柑は満足そうに笑った。
「あはは、それでいいんだよ。じゃ出してあげるよ。しっかり食べな」
邪悪。
どこまでも邪悪。
「あれ? なんか硫酸出したくなったかな?」
「そ、そんな・・・」
亜月は夏御蜜柑の尻を顔に押し付けられた状態だから明確には判別できないが、きっと困惑していることだろう。
夏御蜜柑は知っていた。
亜月がどんな表情を浮かべているかを。
だから、笑う。
夏御蜜柑は笑う。
「あはは、どっちがいいかは亜月次第だよ。ねえ亜月、どっちがいいのかな?」
「・・・そ、それは・・・」
そんなのどっちも嫌に決まっているが、この場にそんな選択肢はなかった。
となるとどう考えても硫酸はお断りである。
流石にそれは耐えられそうに無い。
「明日から爛れた顔で学校行きたくないだろ? だったらお願いの1つでもしてみてよ」
夏御蜜柑は笑う。
どこまでも笑う。
まるで笑う事が夏御蜜柑の存在意義であるかのように。
「う、うんち・・・」
「え?」
「うんちを・・・お願いします」
「ふ〜ん。わかった。じゃあ食糞といこうか」
夏御蜜柑の殺意。
刹那的なものだった。
しかし亜月は即座に反応する。
「は、はい! よろしくお願いします!」
強迫観念。
夏御蜜柑は永劫に笑う。
「あぐっ!!」
瞬間、夏御蜜柑が亜月の顎をこじ開ける。
「もっと開けな。さもないと硫酸だよ」
そう告げた間隙、夏御蜜柑から糞尿が滴り落ちる。
「んぐう!!」
最初に到達したのは液体。
しかしそれは幸いにも硫酸ではなく尿であった。
怖気が走るがまだマシである。
しかし怖気は即座に吐き気に変わってゆく。
「吐いたら殺すよ」
夏御蜜柑の一言。
それが嘔吐を寸での所で食い止めた。
雫の音が胃の中に波紋する。
「お、おえ・・・」
口が開き、言葉よりも吐き気が襲う。
気管に直通する液体が、凄まじく気持ち悪い。
「う、うええ・・・けほっ、けほっ!」
ようやく夏御蜜柑の尿が終了した。
生理的にはどこまでも嘔吐を求めていた。
「こらこら、咳き込むのは早いよ。これからうんちが落下するんだから」
刹那、喉頭に凄まじく生暖かい嫌なモノが差し込まれた。
不純物と死骸の塊。
「おえっ!!」
喉が圧迫されるほどに圧倒的な汚濁。
胃の中に、口の中に、喉にいっぱい広がる暗黒の味。
腐ったような死骸の中。
亜月は涙が溢れて止まらなかった。
夏御蜜柑は笑う。
「こらこら泣いちゃダメだよ。あたしのおしりが濡れちゃうじゃないか」
「う、うう・・・」
しかし亜月は止まらない。
すると夏御蜜柑は笑顔を歪ませた。
「じゃあ最後に亜月の舌で拭いてもうらおうか」
「え?」
しかしその強制に抗う術などなかった。
夏御蜜柑に抗う事など例え神でも不可能なのだから。
だからこそ、亜月は文句1つ言う事無くしずしずと舌を夏御蜜柑の菊門に触れた。