聞こえるのは、虫の音と鎖の音。

 それは交じり合って交錯しているので、どこか絶妙だった。

「いい音だな」

 騎士は笑いながら鎖に繋ぎ、夜の公園を闊歩していた。

「う・・・き、危険・・・ですよ、夜に、こんな恰好で外を歩くのは・・・」

 夏御蜜柑はわざわざ顔を紅潮させながら、たつたない言い回しでそう言った。

 わざと言っているには違いないが、演技の細かさが騎士を決して萎えさせなかった。

 その一例として、夏御蜜柑は謙譲語の使用を少なくして、上品さを消した敬語で会話をするという念のいれよう。

 まったく使っていないわけではないのが外見的にもあまりにも絶妙でこれだけで騎士を興奮させた。

「いいだろ、たまにはこう言ったスリルも必要だ。それに奴隷なんだから当然だろ」

「それは・・・」

「おいおい、今のお前は奴隷なんだよ。いつもの邪悪な笑みを浮かべた全知全能の夏御蜜柑じゃねえんだよ。クソアマが!」

 そう叫び、騎士が鎖をぐいっと引っ張る。

 当然、首が追いきり引っ張られる事になる。

「ううっ・・・」

 その表情に、騎士はどこまでも興奮する。

「おれは素晴らしいご主人様だとは、思わないか?」

「え?」

「お前みたいな下衆な変態の趣味のためにこうして不合格の危険を冒してやってるんだからな」

 もう一度鎖をひっぱった。

 そのたびに夏御蜜柑は苦痛に歪んだ表情を浮かべる。

 もう病みつきになりそうだ。

 あの、人類はおろか神ですらゴミクズ扱いしている夏御蜜柑を支配している。

 これは奇跡か。

「す、すみません・・・」

「ははははは!! なに謝ってんだ? その充血したマンコはどうした?」

 そう言って騎士が足で夏御蜜柑の濡れた股間を軽く蹴りつける。

「あう・・・ん・・・」

 ぽたぽたと夏御蜜柑の股間から液体が零れ落ちる。

 騎士はもはや夏御蜜柑が全知全能である事を疑う余地が無かった。

 ここまで芸が細かいせいか、騎士は完全に本気になっていた。

「そら、さっきから何地面に垂らしてんだよ? 小便か?」

「ち、ちがいます・・・」

 その紅潮、今まで見たどの夏御蜜柑よりも素晴らしいものだった。

「だったらなんだよ?」

「う・・・・・・」

「言え! 夏御蜜柑!!」

 騎士は激昂する。

 夏御蜜柑はびくっと肩をすくめた。

「は・・・はい・・・」

「そうだ、とっとと言え、その充血したマンコから零れてるそれをな」

 そう言って、もう一度股間を蹴りつける。

 夏御蜜柑の表情が少し曇り、声を漏らした。

「う・・・」

「悶えてねえで早く言え。そのマンコがぐしょ濡れな理由だ」

 夏御蜜柑は眼を瞑り、懺悔の如く小さい声でぽつりと言った。

 しかし、騎士には聞こえるように。

「あ、愛液ですぅ」

 そう言うと、夏御蜜柑の股間からダラダラと零れ落ちた。

「変態だな、お前」

「うう・・・」

「つーかよ、お前のその汁がさっきからおれの靴にかかんだよ。どうしてくれる?」

「す、すみません・・・」

 実際には騎士と夏御蜜柑はそれなりに距離はあり、ほとんどかかっていなかった。

 だが、そんな事は問題ではなかった。

「そうだな、これ以上汚れないようにこれで栓するか」

 そう言ってどこから取り出したのか、バイブを取り出した。

 そのまま乱暴に夏御蜜柑の股間に差し込んでゆく。

 じゅぶぶという何とも淫靡な音がした。

 そして音がずぐんという音になった瞬間、夏御蜜柑が跳ねた。

「ひああう!」

 その声に、どこまでも騎士は興奮していた。

「おら、わざわざお前のために栓してやったんだ? 何か言う事あるだろ?」

「あ、あたしの・・・びしょ濡れのオマンコに栓をして・・・いただいて・・・あ、ありがとうございますぅ」

 その双眸に涙が浮かんだ。

 騎士はサイケデリックな世界の中に陶酔している気分だった。

「ふん、これだけのことにいちいち時間とらせんなよ。お前を奴隷にするためにはバレたら困んだよ。それともわざとか?」

「ち、ちがいます・・・・・・」

「お前はこれから一生おれに、違うな、おれの双頭に仕えるために存在するんだろう?」

「は、はい・・・あたしはご主人様にご奉仕するために存在します」

 その言葉に騎士は感動さえ覚えた。

 そこにテストだからなどという興ざめ必至の言葉を一言も口にしないことは瞠目に値する。  

最高の解答ともいえる返答。

「よし、ちゃんと言えたご褒美をやろう」 

 そう言ってバイブのスイッチを入れる。

「ひああっ!」

 バイブの振動に連動するように夏御蜜柑が腰を捻る。

「ずいぶん気持ちよさそうだな、腰をくねらせてよ」

「す、すみません・・・」

「くくく。謝るんじゃねえよ。もう片方がまだ終ってねえんだからよ」

 そう言ってアナルバイブを夏御蜜柑の菊門に突き刺した。

「ああっ! あっあっ!!」

「さあて、言う事があるだろう?」

 騎士の表情が恍惚に満ち満ちていた。

「あっ、あっあっあり、ありっ・・・がとう・・・ございます・・・」

「いやあ、そうして見ると本当にお前夏御蜜柑か? まるで別人だな」

「あ、あうぅ・・・そ、それは・・・ご主人様の・・・ために」

 その甘い言葉は砂糖菓子どころの話ではなかった。

 甘すぎて虫歯必至である。

 もう己の股間を押さえつける事が出来ない。

 臨界に達していた。

「さて、おれも我慢の限界だ。しゃぶってもらおうか」

「え・・・」

「どうした? お前がおれのチンポを双頭にしたんじゃねえか、責任持って処理しろよ」

「は・・・はい。ご主人様のおチンポを・・・しゃぶらせていただきます」

 そう言って夏御蜜柑は跪き、騎士のズボンを下ろし、双頭の性器を出没させる。

 その仕草仕草が騎士を遠い世界へと追いやろうとしていた。

 もっとも、辛うじて残った意思で振り絞っていたが。

「失礼します・・・」

「おう、しっかりしゃぶれ」

「ん・・・んふ・・・ふあ・・・ぴちゃ・・・んちゃ・・・」

「どうだ? うまいか?」

「はい・・・とても・・・おいしいです」

「たっぷり舐め取れよ」

「はい・・・じゅるっ、ちゅぱっ」

 夏御蜜柑はどこまでも一流だった。

 絶頂を堪える事がこんなにも困難な事だったとは夢想だにしなかった。

「ちゅぷ・・・れろ・・・んちゃ」

 バイブは未だに連動しており、その音さえも絶頂に達そうとしている。

 早漏? なんとでも言うがいい。

「いい加減我慢に疲れた。出すぞ。ちゃんと溢さず飲めよ」

「はい・・・・・・ご主人様」

 刹那、騎士が限界に達し、射精した。

 ドクドクと、白い液体が噴出する。

「むぐっ!!」

 双頭から二条の白濁液が噴出したため、片方は夏御蜜柑の口に納まったが、もう片方が夏御蜜柑の顔を汚した。

「あ・・・す、すみません」

「おいおい、何溢してんだよ、命令にそむいた罰を与えないとなあ」

 騎士が悪魔の眼光でそう言うと、徐に夏御蜜柑を掴み、バイブを引き抜き、双頭の性器で夏御蜜柑のヴァギナとアヌスに突き刺した。

「おら、これなら零れねえだろ!」

「あ、ああ、おチンポが、あ」

 そのまま騎士は夏御蜜柑に突き刺す。

 夏御蜜柑も連動するように腰を動かす。

「おら、変態奴隷が、もっと搾り取れ! もっと腰を振れ!!」

「あ、くる! くるぅ!」

「ほら、出すぞ!! この露出狂の変態奴隷が!!」

「ください! ご主人様の精液!!」

 瞬間、騎士は絶頂し、夏御蜜柑の内部にザーメンを送り込んだ。    

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

 騎士も夏御蜜柑も恍惚とした表情で、よろよろと立ち上がった。

 騎士はすでに遠い世界にいっていた。

 それは、肉体的というよりも精神的に。

 どうやらやはり一個の人間では夏御蜜柑を支配するのは相当精神を磨耗するようだ。

 それを見た夏御蜜柑が、とどめとなる一言を告げた。

 これは、騎士には予想していなかった。

「ありがとうございました・・・とっても・・・うれしかったです」

 騎士がその声を聞いた時、現実とサイケ世界の境界が不明瞭になり、ただぼんやりとこう告げた。

「か、帰るぞ・・・いつまでもこんなとこにいたら・・・不合格になっちまう・・・」

 辛うじて残った理性は、不合格になる事の恐怖だった。

 夏御蜜柑は騎士の後ろをてくてくと歩きながら、極めて邪悪な笑みを浮かべた。




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