タルト専門店サファイア。

 その店主。仮名栄美。

 見た目は20代中頃。

 普通の人間から見れば親の臑をかじったかサラ金に手を出したかして建てたとしか思えない店をもっている。

 しかい仮名栄美の実年齢はちょっと説明できない。

 何故なら彼女は人間では、ないのだから。

「やっぱり今日も見られてる・・・」

 栄美は2階にある自室の窓から眼下にある謎の視線に気付き、ベッドから跳ね起き、枕もとに置いてあるサファイアブレードを手にする。

 そのままその視線の方向に神経を集中し、見回す。

 無論その視線の相手はストーカーなどではなく、むしろストーカーならどれだけありがたいことかわからない。

 栄美の神経から伝達された超視界によって識別できたのは2人の中国人。

 それがただのチャイニーズマフィアだったらどれだけ安堵できたことか。

 栄美は握る力を強める。

 その握力たるや軽く150sは超えているだろう。

 栄美の手に握られている灰色の柄と蒼い刀身。サファイアブレードが悲鳴を挙げていた。

「仕方ない・・・とりあえず今日は店を開こう」

 しかしサファイアブレードは飾るべきだろうか。

 万が一を想定して警戒しなければならない。

 今日はコレを隠し持っておこう。

 そう決意し、朝食の準備を始めた。

 

 

 

 鈴検孫は己の肥やした私腹を見て精練された気分になっていた。

「今日も我が精鋭は素晴らしいな」

 一糸乱れぬ整然とした大隊。

 彼らの手には各自異能武器が握られている。

 鈴はそんな整列する私腹をタラップから眺めていた。

 鈴が後ろに控える部下共にアイコンタクトを送る。

 それと同時にタラップは光り、マイクが出現する。

 鈴はふと、空を見る。

 今日も灰色の空が美しい。

 鈴は青空より灰色の空のほうが思いの強さを感じ取れて好きだ。

 空の感情。

 そんなものに何かを思い起こせた。

 鈴は一呼吸を置いてアジテーションを開始する。

「我等中国支局は今や本局に比較し50%増もの軍事力を所有する巨大組織になった。中国支局が本国の総軍事力を追い抜かすのも時間の問題だ。我等中国支局の資産も100億元(約1400億円)に達し、これからは国内だけではなく、世界に向けて物事を考えなくてはならなくなった。更に我々の中国支局を発展させ、いずれは中国社会、世界の秩序に貢献していこうと思う。局員諸君は安心してこの鈴検孫に全てを委ねて頂きたい! 中国支局で貢献しつづける限り、私は諸君等の生活と自由と幸福をここに公約する!!」

 途端、歓声が上がった。

 鈴の言葉には不思議な感覚があった。

 異能でもないのに不思議と人を洗脳するようなイントネーション。

 ヒトラーや美空ひばりと同じものがあるというのだろうか。

 鈴は一頻り歓声が収まるのをまって奥に消えていった。

 

「ボス。このあと新設された4箇所の異能軍事工場に赴き、視察と会議を各50分ごとにお願い致します」

 鈴は長い廊下を競歩するかのような速度で猛然と突き進みながら秘書の言葉を耳にする。

「うむ」

 鈴は大急ぎで車に乗る。

 白いポルシェが嫌らしかった。

 

 4箇所の異能軍事工場は新設されたばかりのせいか、まだ真新しかった。

 鈴はそれこそ塵一つに至るまで精密に連立する機械を検分し、会議室に向かった。

 鈴は仕事に関しては潔癖症なまでに生真面目だった。

「これに関してコストがかかり過ぎて――――――」

「異形、心理魔ゲイトを利用して生成した異形兵器についてだが――――――」

「北米、EUに並ぶためにはアジアの団結が―――――」

「プライオリティの第一位は異形の探求だと言う事を――――――」

 

「ボス、この後は共産党、大手電子企業のCEOとの会食が―――――」

「ああ」

 車の中でも鈴は書類に眼を通している。

 その書類はグリモア・ラスボスの近況報告書だった。

 鈴の世界征服のためにはサファイアブレードは必須であり、また時価数億元のサファイアも重要な資産となる。

 何が何でも手に入れなければならないのだ。

 30年後の世界の皇帝になる事を夢見る男、鈴検孫はどこまでも本気だった。

 

   

 

 栄美は黙々と仕事をしていた。

 しかし内心気が気でなかった。

 店の外にはまだ中国人が監視している。

 バレバレなんだから堂々と入って来いっての。

 そしてわたしに殺されろっての。

 どうせ遅かれ早かれわたしに殺されるんだから。 

「あの〜」

 中国人は潜んだ状態で昼食にしたらしい。

 なるほどパンと牛乳か、王道だな。

「あの〜すいません〜」

 しかし何でアレが王道なのかよくわからない。

 特にわたしは牛乳はあまり好きじゃない。

 どっちかというと豆乳のほうが好きだ。

 豆乳といったら湯葉だな。

 あ〜湯葉が食べたい。

「あの〜」

「へ? あっ、は、はい! すみません!!」

 どうやら超視界に没頭しきっていたようだ。

 注意しないとな。

 栄美はあわてて停滞しきっていた仕事を再開した。

 

 

 

 高也は高也で仕事してしていた。

「ええ、そうです。間違いありません。あれは鈴中国支局長の差し金です」

 高也は電話をしていた。

 電話の相手はIEEO秘密工作員『EPP』(排除準備監視部隊)。

 その部長からの電話である。

「あのですねー。異形グリモア・ラスボスについてですけど・・・え? 場所?」

 当初ふざけ半分だった顔が急に強張る。

 どこか理解していた。予想通りの答え。

「何だと!?」

 しかし予想通りであるにも関わらず、高也の口調が変貌する。

「そうか・・・・・・わかった」

 高也は電話を切る。

 そのタイミングを見計らってシャトーが声をかける。

「どうしたの高也?」

 高也は耳の穴に小指を差込み、ぐりぐりと回しながらどうしたらいいものかという表情を浮かべ、苦言した。

「ああ、グリモア・ラスボスって知ってるよな」

「当たり前」

「それがサファイアのあの姉ちゃんなんだ」

「・・・・・・・・は?」

 その表情はまるでモアイ。

 一番具体的に言うとベルリンの壁が建設された際、西側にいたドイツ人の一人が映像に残した時の驚愕の表情と瓜二つであった。

 ・・・・・・・・・わかりにくいか。

 というかわかったらすごい。

「へえ・・・あれがグリモア・ラスボス」

「そうなるな」

「で、中国のあのおっさんが何だって?」

 嫌なところを聞かれた。

 高也は煙草を吹かした。

「あのおっさんがさ、勝手に捕獲するからこっちは動くなって言われて、さっきのEPPの部長がとっとと拿捕しろときたもんだ。・・・・・・どうしよう」

 シャトーは悩んだ。

 確かにどっちにしたって角が立つ。

 しかし実益を考えるならEPPより。

 となると答えは・・・。

 シャトーが言おうとするその直前、高也が釘を刺してきた。

「ああ、問題はさ、おっさんの命令に逆らうとICBMをここに落とすって脅された」

 シャトーは絶句した。

 ICBM?

 核ミサイルじゃないか。

 しかも大陸弾道。

 そんな物騒なもの持っているのかあのおっさんは。

 きっとソ連の払い下げ品を格安で購入したに違いない。

「でも、高也。何もしないと本局の査定に響くよ」

「わかっちゃいるんだけどさあ、流石に大多数の命を犠牲にする事は・・・」

 高也が上の空でそう返す。

「でも、鈴だってただの脅しと言う事も・・・ほら、下手にミサイルなんか発射したら戦争になるし」

 シャトーは何とか弁解しようと作り笑いを浮かべながら反論してきた。

 しかし高也は動じない。

「確かにICBMは虚偽かもしれない。でも最低爆撃はしてくると思う。もしくはテロの可能性もありうる。あのおっさんは絶対に攻撃はしてくるぞ」

 たとえICBMが揶揄だとしても。

 それはシャトーも理解できた。

「じゃあどうするの? 局長として」

 その言葉は高也に重く圧し掛かった。

 そう、高也は局長であり、1000人の部下を率いて先頭に立つ存在である。

 そういう存在は、決断を誤ってはならないが、遅れてもならない。

 高也は徐に立ち上がり、命令を発した。

「部隊の編成だけはして、こちらからは拿捕しない。鈴の一派が失敗した場合のみ、行動。グリモア・ラスボスを拿捕、それが叶わなければ駆除する」

 おそらくこれが最善。

 シャトーはそんな高也の決断にふっと笑みを浮かべ、肩をすくめた。      

「・・・・・・いいとこどり」

 そんな言葉が聞こえてきた。

 シャトーの言葉に違いなかった。

 しかし高也はそんな言葉を無視し、窓からIEEO日本支局の敷地を見回した。

 

          

 

 その日の夜は雪が降った。

 ちらほらと、幻想的なまでに雪が煌々と夜の闇に吸い込まれるように照らめいている。

 栄美は準備していた。

 手にはサファイアブレードを手にしている。

 ちりちりと、電気が走る。

 栄美は感じていた。

 危機を感じていた。

 店を閉め、超視界を使ったら2人が6人に増えていた。

 もとより6人程度なら相手にもならない。

 これでも蒼い獣と称される異形。

 しかし問題は6人を屠った所で何の解決にもならないということだ。

 戦いとは、頭を取らない限り、終わらない。

 おそらく相手はかつての異能協会。

 現在は名前を変えたようだが唯一の同胞を私利私欲のために殺し、こんな無残な姿にさせられたというのだ。

 猫でも虎になるほどの屈辱。

 殺す。

 たとえわたしが殺されたとしても頭の人間はブチ殺す。

 そもそもわたし達が何をしたというのか。

 何もしていない。

 ある日突如として捕まり、実験動物にされ、こんな惨めな姿にされたのだ。

 これを許せというのか?

 無理にきまっている。

 殺す。

 絶対に殺す。

 背中にちりちりと電気が走る。

 栄美はサファイアブレードは体内に吸収し、隠した。

「さあ、来るなら来なさいよ」

 その挑発にも等しい言葉と同時に、6人の中国人が、タイツにも似た特殊なスーツを着込み、栄美に向かって襲い掛かる。

 栄美は体裁上の抵抗として1人の頭を鷲掴みにし、その万力にも等しい握力でトマトにしてしまった。

 脳みそがぬめぬめとたれ落ち、血がまるで爆発したみたいに辺りに散乱し、骨が肉を飛び出し、その破片が5人の1人を直撃した。

 目玉がおたまじゃくしになって床に落ちた刹那、5人は異能封じを施した網で栄美を捕縛し、崩された。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 しかし栄美は悲鳴ひとつあげず極めて冷静である。

「しかし頭を握り潰すとは・・・人間の握力ではないな」

「黙れ、任務を遂行しろ」

「その通りだ。我々の目的はこの異形の拿捕と連行だ」

 中国語でそうまくしたてているが栄美には中国語はわからない。

 すると、栄美は窓から叩き落され、地面に激突する。

「・・・・・・・くっ!」

 少しだけ痛かった。

 もとより異形なのだからこの程度の高さから落ちた所でどうと言う事は無い。

 しかし網のせいで身動きがとれないため、受身をしそこなった。

 すると中国人共は窓から颯爽と飛び降り、網ごと栄美をコンクリの箱の中に押し込んだ。

 中国人はそのコンクリを大型トレーラーに入れ、去っていった。

 

 

 

 高也には報告が入った。

「そうか。拿捕に成功したか・・・」

「これでサファイアも閉店か・・・あーあ」

 二人は冷たいため息をついた。

「ねえ、高也」

「ん?」

「雪見酒しよっか」

 高也はふと窓から空をみると雪が綺麗に照らめいていた。

「・・・そうだな」

 高也は酒とグラスを取り出し、ソファの対面にあるテーブルに置く。

「日本酒は無いからワインでいいか?」

「いいわ、何を開けるの?」

「ふふ・・・聞いて驚け。俺の秘蔵っ子82年もののル・パンだ!」

 高也は高々とボトルを見せびらかす。

 まるで子供の自慢のそれだ。

「ぬな!? どこで買ったの?」

 しかしシャトーは食いついてきた。

 ちなみにル・パンは日本ではけっこうレアなワインである。

「オークションで競り落とした。ロンドンまで足を運んだ甲斐があったというものだ」

 ちなみに高也は1本3000ポンド(約60万円)で購入。

 高也とシャトーは窓ごしにワイン片手に乾杯した。 

 

 

 

 一方上海にある孫の自宅ではその報告に歓喜していた。

「わはははは!! ついに手に入れたのだな! これで私の世界征服は約束されたも同然だ! わは、わははは!!」

 鈴は悠々と酒を取り出し、上海の街並みを眺める。

 後ろで鈴の愛人が怯えていた。

 それくらい今の鈴は狂っていたのだ。

「何を・・・そんなに喜んで・・・いるの?」

 愛人が恐る恐る鈴に尋ねる。

 鈴は振り向く事もせず、金茂ビルの上階の自宅から見下ろす世界を眺めながら言った。

 その声は狂っていた。

「世界を見下ろすのが愉快でたまらないんだ。だってそうだろ? いずれこの世界が丸ごと手に入るのだからな。30年後には上海は世界の首都となる。その世界の首都の皇帝になる事を約束されたわけだからな。笑わないほうが可笑しい。私は世界の皇帝となるのだ。わははははははは!!」

 鈴の双眸は妖しく輝く。

 間違いなく狂乱に満ちた目だ。

 愛人は狂ったその男の背中に、心から恐怖した。

 

 

 

 栄美はコンクリの中で冷笑を浮かべていた。

 いくら異能封じを施していても所詮は網。

 鋼鉄のワイヤーくらい用意すべきだったのだ。

 栄美の万力のような『純粋な腕力』で網を引きちぎっていく。

 少し手が草臥れたがそれだけだ。

 栄美は体からかつての同胞、サファイアブレードを取り出し、構えた。

「もう少し待っててね」

 両手に構え、意識を集中する。

 後は、十数時間後、目的地に辿り着き、頭をブチ殺すだけだ。

 

 

 

「わあー綺麗なの」

「本当だね」

 圭司と亜美はまだ旅館にいた。 

 何泊すれば気が住むというのか。

 雪が彼らの夜を明るく照らした。

「ねえ、圭司ちゃん」

 亜美が少し紅潮した様子で圭司を見つめる。

「ん? 何だい」

 亜美が圭司にゆっくりと近づき、椅子に寛いでいる圭司の上に乗った。

「何か・・・・・・あたってるの」

「それは・・・しょうがないだろう」

「ふふふふ・・・圭司ちゃんのそれ・・・ほしいの」

「雪見しながらかよ・・・ま、それはそれでいいか」

 雪がちらほらと降っている。

 

 

 

 他屋と菓子は雪見をしていた。

「・・・・・・・・・遅い」

「今日は遅くなるっていってたじゃない」

「昨日の今日で遅刻するとは・・・これはたっぷりとお仕置きがいるわね」

 他屋は少し邪悪な表情を浮かべる。

 菓子はそんな他屋を見て辟易するばかりだった。

 

 

 

 レクリエールはベッドにつきながら思案していた。

「鈴の目的は・・・」

 すでに鈴がグリモア・ラスボスを拿捕したとの報告を受けていた。

 鈴検孫。

 奴の目的がわからない。

 長官の座ならいつ明け渡してもいいし、奴は金にも権力にも困っていない。

 何がそんなに奴を駆り立てるのか。

 鈴の動向は昔からおかしかった。

 とりあえず黙殺してきたが異能武器を製造し、軍隊を編成し、まるで異能協会みたいな真似をする。

 鈴の目的はIEEOを再び異能協会にすることだろうか?

 しかしそれだと疑問がいくつも浮上する。

 グリモア・ラスボスへの執着。

 異常なまでの軍隊の増強。

 経済、政界パイプの連動。

 度重なる条約違反。

 純粋に長官になり、そこから異能協会化していってもいいし、それなら波風が立たない。

 それくらいインテリの鈴にわからないはずがないのに、何故あんなに自分の立場を危うくするような真似を平然と行使できる?

 わからない。

「・・・・・・・・・」

 レクリエールは終始思案した。

 ふと、側面に鏡がある。

 それはどうみても10歳の少女にしか見えない。

 異能『隠老隠寿』。

「・・・・・・これで生き延びたなんて、かつての同志たちに申し訳が立たないわね」

 今は懐かしき月草事件。

 レクリエールは自嘲し、枕に埋もれた。

        

 

 

月草、ルーン・リメルバ―、聖使アクリルをIEEOでは最上位のこの3体の階級を『運命』(ソール)呼ぶ。

しかしIEEOが1970年以降駆除を禁じている異形はそれだけではない。

運命の下の階級に、順番に上から言っていくと

『至高』(スュプレーム)

『崇拝』(キュルト)

『天地』(テール)

『女神』(デエス)

『聖域』(サンクテュエール)

『高尚』(エレヴァシオン)

『神聖』(サントテ)

『天秤』(バランス)

『自由』(リベルテ)の9つ。『運命』と合わせて10の階級に属する異形は駆除禁止である。ちなみに夏御蜜柑は『論外』(セタオール・ドゥ・ケスティオン)というものに属している。

異能の場合はそんな階級はなく、Po値が全てであり、駆除するに値するかしないかでしかない。

しかし、超例外的な異能の場合は名誉(?)にも階級に属することが出来る。

ちなみに当然この階級に名を連ねる以上只者ではない事は説明する必要もないだろう。

あえて各階級に異能、異形問わず一名づつ挙げるのならば『至高』はクラウド・ペッパートン(力の迷邦者)。『崇拝』は寄生のエリア(悪魔)。『天地』はティリシア・ロワイロット・ジュイゾ・ラ・ムーン(月の司祭)。『女神』はルビデ・パブロ・フレンシス(吸血鬼)。『聖域』は水村イヨウ(傷つかない所有者)。『高尚』は水村季節(人類の頂点)。『天秤』はブルーリスト・トゥルーレイン(妖精)『自由』は自殺を望んだ101人の代表(吸血鬼)。が代表といえる存在であろう。

ちなみに『高尚』にランクインしている水村季節は異形でも異能でもなくただの人間である。

しかし、幼稚園入学式の日、1.5m級の野犬に襲われたが見事返り討ちにし、小学時代には猛獣狩りを趣味とし、熊や獅子はおろか巨象を一発で蹴り殺しニュースに取り上げられ、中学時代に人類の代表として、核攻撃を可能とする『世界を破滅に導く男』という能力を持った異能、核露星を秒殺し、高校時代は鉄砲玉のバイトを行い、警視庁を壊滅させ、さらに短大時代、季節同様何の異能も持っていないにも関わらず250日間物を食わず、眠らず、排泄せずに生還した男、山田田中と死闘を繰り広げ、勝利を収めた実績が相成って今年、登録された。

他にも超強大な異形、吸血皇家リメルバ―家の第六子。フレイド・リメルバ―を殺害し、無限の気配を持ち、ダイヤを素手で切断する盲目の女、哀黒小蝶に打ち勝ち、何でもTVで大統領の演説が気に食わないとの理由で単身アメリカ合衆国に上陸、ホワイトハウスを襲撃し、大統領を公然と殴り殺したという極めて不穏な真似まで行ってしまったという。

ちなみに水村季節と戦った場合の生存確率は2.17%と言われ、数少ない生存者、哀黒小蝶曰く「季節と交える事は硫黄島で米兵を迎え撃つ日本兵と変わらぬわ」とまで言っている。(日本兵の生存確率1.25%)

ただ違いがあるとすれば硫黄島では米海兵隊の死者、負傷者数が3万2676人(うち、死者数約6000人)であるのに対し、水村季節の負傷回数はたったの12回(うち重傷を負わせたのは山田田中ただ1人)であるという事だろうか。

なんでも現在彼女は極々平凡な主婦として生活しているらしいが、世界中の国家機構やIEEOは常に彼女の動向を監視しているという。

ちなみに自殺を望んだ101人の代表とは、自殺を追った86人の総長、自殺を求めた47人の頂点よりも格上で、世界中の自殺者の怨念を吸収し、負の極致とも言える吸血というより吸念鬼とも言うべき吸血種。実際には101人どころではないのだが、体裁上、吸収した3体のランク付けとして、101、86、47という数字(人を%に置き換えたのが正解)をふっている。その恐ろしさたるや、どう説明したらいいか・・・自縛霊と吸血鬼を足して2をかけたような存在と言うべきか・・・とにかく並ではないとだけはいえるだろう。




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