「おれの全てを捧げるから! 夏御蜜柑!! おれの奴隷になってくれ!!」
双頭の性器を持つこの男は夏御蜜柑に魅入られた。
「え? 本気?」
夏御蜜柑は笑った。
双頭になったのは夏御蜜柑によるものだ。
今まで数多くの彼女に余りにも局地的な行為を強制したため幾度となくふられつづけ、ついには夏御蜜柑が「もう二度と彼女ができない体にしてあげるよ」と笑いながら性器を双頭にしたのだ。
だが、それがこの男の魂に火をつけた。
「ああ!! 本気も本気!! マジな話だ!! 何でもしてやる!! お前の欲しいものは何でもやる!! だから、頼む!! おれの、おれだけの、雌奴隷になってくれえ!!!」
今まで数億の人間を弄んできたが、こんな事を言ったのはこの男――中蛭騎士(なかびるきし)が初めてだった。
「騎士ちゃん・・・相手見てものいいなよ。あたしは今までご主人様をやった事はあっても奴隷なんか一度もないんだよ」
「知ってる!! だが、お前しかいないんだ!! 奴隷になってくれるやつはお前だけなんだ!!!」
騎士は土下座をして、双眸に涙を溜めながら額を地面にこすりつけた。
まさにこれこそ哀願のベスト・オブ・ベスト。
今ならぱおーんと泣き叫ぶ巨象も大空を鷹のように舞う事だろう。
「あたしはね、代償で願いを叶えたりはしないんだ」
「なら! どうすれば願いを叶えてくれるんだあああああああ!!」
騎士はどこまでも本気で夏御蜜柑に土下座していた。
「そもそもね、代償を支払うだけで願いを叶えてもらおうなんて商人根性持つんじゃないよ。それじゃ買い物と同じじゃないか。お金のかわりに代償を支払うだけなんだから。あたしが願いを叶えるのはテストに合格した時だよ。願いを叶えるにふさわしい器があるか試して合格したものだけが全知全能の恩恵にあやかれるんだ」
それは夏御蜜柑の美学だった。
神様は大切なものを失うか、賽銭箱に財産を投棄すれば叶えてくれる時も有る。
悪魔は魂を売れば、願いを叶えてくれるかもしれない。
だけどそれは買い物だ。
夏御蜜柑はそういう考え方は嫌いだった。
むしろ願いは受験戦争。
入試でも合格点を取ったものが中学なり高校なりに入学することができる。
それは、買い物ではない。
「わかった!! どんなテストでも出してくれ!!! 命を賭けて解いてやる!!!」
騎士はついに仏教にまつわる最高のお辞儀『五体倒置』を放った。
夏御蜜柑は笑った。
「いいよ。テストは簡単。これから日常生活にあたしが奴隷として同居生活を行う。期間は1ヶ月だ。その間『騎士ちゃんの社会的地位に何ら変調をきたす事無く生活し続ければ合格』『欠片でも社会的地位に揺らぎが生じたら不合格』これでどうかな? 合格したら騎士ちゃんの一生涯、あたしが奴隷になってあげるよ」
「やる!!!!!!!! やるに決まってるだろおおおおおおおお!!!!!!」
即答だった。
「ちなみに不合格だった場合は騎士ちゃんには宇宙空間に5億年禁固刑だ。それでいいよね」
「もちろんだ!! 不合格だった場合は殺そうが、それ以上の苦しみを味わわせようが構うものかああああ!!!」
ちなみに『味わわせる』は誤字ではない。
「わかった。では早速スタートだ。・・・う〜ん、でもこのままじゃ恰好つかないから・・・これでいいかな?」
夏御蜜柑がそう言うと、纏っていた服が一瞬にして奴隷服のそれになった。
言うまでもないことだが、現在の夏御蜜柑は女性バージョンである。(もっとも滅多に男にはならないのだが)
「うおおおお!! それだああああああ!!」
騎士は泣き叫ぶ。
どうやら喜びが絶頂を迎えたようだ。
夏御蜜柑は跪き、少し子悪魔的な笑みを浮かべて忠誠を誓った。
「ではご主人様。あたしは今日から1ヶ月間ご主人様のモノになりました夏御蜜柑といいます。よろしくお願いします」
不覚にも、騎士は射精してしまった。